妄想性障害とは
妄想性障害は、「誤った思いこみ」を一つまたは複数抱えており、その状態が少なくとも1ヵ月間続いてしまうのが特徴です。
妄想性障害を発症している方には、以下の様な傾向があります。
- 「恋人やパートナーに裏切られる」など、現実的にあり得る状況が含まれている場合があります。
- 通常、社会的役割を果たせる状態であるため、仕事をされています。
他に疑われる原因を除いてから、既往歴に基づいた診断を行います。
医師が患者様と良い関係を築くことは、妄想性障害の治療においてとても重要です
ほとんどの場合、妄想性障害は成人期中期~後期に発症します。妄想は非現実的なものではなく「ストーカーに追いかけられている」「毒を食べ物に盛られる」「感染させられる」「恋人やパートナーに裏切られる」など、実際に起こり得るような内容も含まれています。
次の項目では、妄想性障害のタイプについて説明します。
妄想性障害のタイプ
色情型
「誰かが自分に心を寄せているのではないか」と思い込むタイプです。
電話や手紙などのやり取りなどを通して、その妄想の対象者に会おうとします。監視・ストーカー行為など、法に触れる行動をとることもあります。
誇大型
「自分にはすごい才能がある」「歴史的な発見をした」などと思いこむタイプです。
嫉妬型
はっきりしない証拠から誤った推測をして、「恋人(または配偶者)が浮気をしているのではないか」と思い込むタイプです。
深刻な状態になると、傷害事件を引き起こすこともあります。
被害型
「自分は嫌がらせされている」「誰かに見張られている」「自分に関する陰謀が企てられている」「誹謗中傷を受けている」などと思い込むタイプです。自身の身の潔白を証明するために、裁判所などの行政機関に駆け込む方もいます。
深刻な状態になると、想像上の被害に報復しようと、暴力的な言動をとることもあります。
身体型
「身体が不自由だ」「自分の身体は臭い」など、身体の状態や特性に関する思い込みに囚われるタイプです。
「寄生虫に感染した」と、身体的な疾患にかかったと思い込む方もいます。
妄想性障害の症状
妄想性障害は、妄想性パーソナリティ障害(パーソナリティ障害A群の中の一つで、奇妙で風変わりな様子を特徴とする)によって発症するケースも存在します。
妄想性パーソナリティ障害は、成人期早期に始まり、他人の行動や動機に対して疑い深くなる障害です。
初期段階では
- 誰かに利用されていると思い込む
- 他人の誠実さ、信頼の高さに囚われる
- 悪意のない言葉や出来事に対して、脅迫的意味が隠れていないか読み取ろうとする
- 恨みを長年抱き続ける
- 自分が軽く見られていると感じたらすぐに反応する
などの症状が現れます。
妄想性障害の診断
「妄想を伴った特定の状況」がないと判断できましたら、本人の既往歴に基づいて診断を行います。
なお担当医師は、患者様の危険性の度合いを踏まえることが重要で、どの程度まで自身の妄想に基づいて行動するつもりなのかを確かめる必要があります。
妄想性障害の頻度と特徴
0.2%ほどの方が一生涯のうちに発症すると言われています。一番多いタイプは「被害型」です。
発症頻度の男女差はほとんどありませんが、嫉妬型は男性に多いと考えられています。若年層の方も発症しますが、高齢者の発症が多い傾向にあります。
統合失調症よりも、日常生活などへの悪影響は限定的だと言われています。しかし中には後に、統合失調症を発症する患者様もいます。
妄想性障害の治療
妄想性障害は統合失調症と異なり、お薬の効果はあまり発揮されません。
また、患者様ご本人が「発症している」と理解できない、または認められない状態にいるため、そもそも治療を受ける気になれない方もいます。
周囲への悪影響が大きい場合は、入院を検討することもあります。
また効果はあまり得られないものの、お薬を処方しながらご家族からのサポートを得て、環境を整えることも必要です。