双極性障害(躁うつ病)の症状
双極性障害(躁うつ病)とは、気分が昂ぶる「躁状態」と気分が落ち込む「うつ状態」を繰り返す脳の疾患です。
躁状態
気分が昂ぶり、下記のような状態になります。
- あまり眠れていないのに日中は元気でいる、身体の疲れを感じない
- 頭が冴えている
- 「自分はすごい」という気持ちでいっぱいになる
- 些細なことでイライラする、怒りっぽくなる
- 何度も電話をかけたりメールを送ったりする
- 誰彼構わず話しかけてしまう
- 浪費や性的逸脱(安易に関係を持ってしまう)が見られる
うつ状態
気分が落ち込み、下記のような状態になります。
- やる気が湧かない
- 疲れやすくなる、いつも疲れを感じる
- 食欲が湧かない
- 活動するのに時間がかかる
- 寝ても寝ても眠い
- 眠れない、何度も目が覚める
- 以前は好きだった趣味などが楽しく感じられない
- 「自分には価値がないのでは?」と思う
うつ病と双極性障害の違い
双極性障害は前述した通り、躁状態とうつ状態を繰り返す精神疾患です。
一方、うつ病の場合は、気分が落ち込んでいる状態しか見られません。
そのため通常のうつ病は双極性障害とは区別され、「単極性うつ病」とも呼ばれています。
躁うつ病・双極性障害の2つのタイプについて
双極性障害は、激しい躁状態が見られる「双極Ⅰ型障害」と、Ⅰ型よりも軽い躁状態が見られる「双極Ⅱ型障害」に分類されます。
うつ状態の度合いは、どちらも大差がありません。しかしⅡ型の方が、うつ状態が長引く傾向にあります。
双極Ⅰ型障害
気分の高揚が激しい「躁状態」と「うつ状態」を繰り返すタイプです。
- 通常、躁状態が1週間以上続きます。
- 「うつ状態」にいるのは、発症している期間の約1/3になります。
- 周りから気付かれやすい傾向にあります。
双極Ⅱ型障害
軽い気分の高揚が見られる「躁的な状態(軽躁状態)」と「うつ状態」を繰り返すタイプです。
- 「躁的な状態」は通常、4日以上持続します。
- 「うつ状態」にいるのは、発症している期間の約1/2にあたります。そのためⅠ型よりも、自殺リスクが高い傾向にあります。
- Ⅰ型よりも周りに気付かれにくいタイプです。
躁うつ病・双極性障害の治療
当院では以下のような治療で双極性障害を治療していきます。
薬物治療
気分の落ち込みを軽くさせる「気分安定薬」を処方するケースが多いです。
国内ではよく、リチウムやカルバマゼピン、バルプロ酸、ラミクタールなどが使われています。
その他にも、非定型抗精神病薬であるオランザピンやアリピプラゾール、クエチアピンを処方することもあります。
双極Ⅰ型障害の患者様には、感情の昂ぶりを軽くする薬・抗うつ薬との併用を行うこともあります。
精神療法(心理社会的治療)
患者様ご本人が疾患について理解し、受容し、前向きに治療を受け続けていけるようサポートしていく治療です。
ご家族からの理解・協力を得て疾患を受け入れる「家族療法」や、疾患の捉え方の癖を変えていく「認知療法」、周りの人々との人間関係に関する対処法を身につけ、回復させる「対人関係療法」、ご自身の社会リズムを把握し、それが乱れる原因を理解して改善を目指す「社会リズム療法」なども行います。
躁うつ病・双極性障害と共生するために
「天気が良いから外出したくなる、人に会いたくなる」
「嫌なことがあったので自宅にこもりたい、一人でいたい」
など、気分の調子による行動の変化は、誰にでも起こり得るものです。しかし双極性障害の患者様の場合、多くの方が経験している気分の浮き沈みを通り越して、躁状態やうつ状態を繰り返してしまいます。
ただし、ご自身が双極性障害だということに気付くのは、難しい事です。
「我慢できるから」
「我慢できればもとに戻る」
「自分でなんとかできるから」
と抱え続けることで受診が遅れ、さらに悪化させてしまう方も少なくありません。
周りの方から心配されたとき、ご自身が少しでも辛いと感じた時は、一人で抱え込まずに、当院へご相談ください。
双極性障害を治すには、まず、ご自身の疾患について適切に受け入れることが不可欠です。そのためにはまず診断を受け、患者様やご家族が疾患に対する正しい知識・理解を深めていくことが重要です。また、それが回復の道の第一歩にもなります。